民法の大規模改正について ~相続法編~
相続に関しても、民法、家事事件手続法などが改正され、段階的に施行されてます。
ポイントとなるのは以下の点です。
- 1.配偶者保護のための方策
- 2.遺産分割前の預貯金の払戻し制度の創設等
- 3.自筆証書遺言の方式緩和
- 4.遺留分制度の見直し
- 5.相続人以外の者の貢献を考慮する方策
1.配偶者保護のための方策
(1)配偶者居住権の新設
※2020年4月1日施行
配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、配偶者は、遺産分割において配偶者居住権を取得することにより、終身又は一定期間、その建物に無償で居住することができるようになります。
<改正によるメリット>
配偶者は、居住建物を取得する場合には、建物の財産的価値が大きすぎて、他の財産を受けられなくなってしまうおそれがありましたが、今後自宅での居住を継続しながらでもその他の財産も取得できるようになります。
(2)婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
※2019年7月1日施行
婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産(居住用建物又はその敷地)の遺贈又は贈与がされた場合については、原則として、遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。
<改正によるメリット>
このような被相続人の意思の推定規定を設けることにより、原則として特別受益(遺産の先渡し)を受けたものと取り扱う必要がなくなり、配偶者は、より多くの財産を取得することができるようになります。
2.遺産分割前の預貯金の払戻し制度の創設等
※2019年7月1日施行
預貯金が遺産分割の対象となる場合に、各相続人は、遺産分割が終わる前でも、一定の範囲で預貯金の払戻しを受けることができるようになります。
<改正によるメリット>
遺産分割における公平性を図りつつ、相続人の資金需要に対応できるようにするため、預貯金債権の一定割合(金額による上限あり)については、家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口における支払を受けられるようになります。
3.自筆証書遺言の方式緩和
※2019年1月13日施行
自筆証書遺言についても、財産目録の各頁に署名押印をすれば、財産目録については手書きで作成する必要がなくなります(全文手書き要件の緩和)。
4.遺留分制度の見直し
※2019年7月1日施行
(1)遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができるようになります。
(2)遺贈や贈与を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができます。
<改正によるメリット>
従来は、遺留分減殺請求権を行使した時点で当然に共有となっていました。それが、遺留分減殺請求権の行使により共有関係が当然に生ずることを回避することができるようになります。
遺贈や贈与の目的財産を受遺者等に与えたいという遺言者の意思を尊重することができることにもなります。
5.相続人以外の者の貢献を考慮する方策――特別の寄与の制度の創設
※2019年7月1日施行
相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。
<改正によるメリット>
相続開始後、長男の妻(ヨメ)は、相続人(長女・次男)に対して、金銭の請求をすることができるようになり、介護等の貢献に報いることで、実質的公平が図られることとなります。
6.まとめ
以上が相続法改正の概略となります。更なる法改正に関するご質問は、弁護士に是非ご相談を。